
事件名:滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件
事件発生日:2005年9月9日(2006年1月6日死亡)
発生地域:北海道滝川市
事件概要:北海道滝川市立の小学校に通う当時小学6年生の女子生徒が、いじめを苦に、遺書を残して首吊り自殺した事件
加害者達のいじめ行為
①被害者がバレンタインデーのチョコレートを渡そうとした際、「すごく気持ち悪い」と言い放ち、更に「農協で買ったチョコレート」と揶揄した
友音派、江部乙小学校5年の時、同級生のAにバレンタインのチョコレートを渡そうとしたことがあった。
その際Aが「すごい気持ち悪い」と言い、また「農協で買ったチョコレート」と揶揄した。これを見た友音の友だちであった女子たちは、Aたちに嫌われたくないと思ったため、友音とはつきあわなくなってしまった。
②クラス替えで、被害者の隣になった生徒に対し、「可哀想」と言い、多くのクラスメイトが同調する言動をとった
小学校6年生の時の平成17年7月7日、午前中のホームルームの時間のクラス席替えの時、友音の隣になったBに対し、Aは「隣の席でBが可哀想だ」と言い、クラスの大勢の子どもたちがこれに同調し、騒然となった。
しかし、その場にいた担任のIt教諭は何の対応もしなかった。
③修学旅行の班を決める際に、被害者と同じ班になりたくないと主張し、被害者を孤立させた(結果、被害者は一人だけ男子の班に入った)
7月14日、修学旅行の自主研修グループ分けの際、自主的にグループを決めることになったが、女子のグループ決めでは、友音と同じグループになるのは嫌だということで、友音は女子のグループに入ることができなかった。
男子のグループに、女子一人で入ることになった。
他のグループでは、男子のグループに女子1人が入るというような構成はなかった。
④修学旅行中、『ホテル内での生活』や『自由行動』から孤立させた
修学旅行中の友音の行動は、客観的にもいじめられて悩み苦しんでいることが窺われるような元気のない状況であった。
例えば、自主研修時の友音は、食欲がないとして同じグループの女子たちとは一緒に食事を摂らなかった。
また、ホテルでは友音がたった一人で行動していた。
ホテルの部屋の鍵を持っていなかった友音は、1人でエレベーターを何度も上り下りしていた。
ルスツ高原でも、友音は同じ部屋の女子とも他の女子とも行動せず、担任や男子と遊具に乗ることが多かった。
加害者の処分
なし
教師等の処分
①滝川市教育委員会の教育長が辞職した
2006年9月、遺族が新聞社に遺書を公開し、2006年10月上旬にマスコミで報じられた。
滝川市教育委員会は2006年10月5日に遺族に謝罪したものの、マスコミに対しては女児の遺書について「遺書ではなく『手紙』である」と回答した。
その後、2006年10月14日に滝川市教育長が辞職した。
出典;「滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月13日 (金) 10:17 UTC
②滝川市が、滝川市教育委員会の幹部職員二人を停職2ヶ月の懲戒処分にした
また、この問題について不適切対応をしたとして、滝川市は同年10月16日付で教育委員会幹部職員2人を更迭した上で停職2ヶ月の懲戒処分にした。
出典;「滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月13日 (金) 10:17 UTC
③北海道教育委員会が、校長を減給1ヶ月の懲戒処分にした
④北海道教育委員会が、教頭と担任教師を訓告処分にした
滝川市教育委員会は同年12月5日に調査報告をまとめ、同月9日調査報告書の市民説明会を開いた。
北海道教育委員会は2007年2月28日に、積極的に原因究明に取り組まず校長としての職務の義務に違反したとして、校長を減給(10分の1)1カ月の懲戒処分、また教頭と当時の担任教諭は訓告処分とした。
出典;「滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月13日 (金) 10:17 UTC
民事裁判
①遺族と滝川市、北海道が和解した
自殺した女児の両親は滝川市と北海道に対し7900万円の損害賠償訴訟を札幌地方裁判所に訴え、2010年2月に裁判所から和解案を受け入れ和解が成立した。
出典;「滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月13日 (金) 10:17 UTC
②いじめ自殺につながる予見性があったことが認定された
和解の中には「いじめが自殺につながることを予見できた可能性」を認定させることや、北海道に対しいじめの実態調査として被害者側の意見を聞いて調査する第三者機関の設立努力も含まれている。
出典;「滝川市立江部乙小学校いじめ自殺事件」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月13日 (金) 10:17 UTC
地裁は「担任らが友音さんを注意深く観察し、たがいに情報を共有していれば、いじめは認識することができた」と判断し、安全配慮義務違反(過失)を認定。そして、いじめを認識していれば「自殺することも十分に予見できた」とし、自殺の予見可能性も認定した。
③学校と滝川市教育委員会による、被害者と遺族に対する名誉毀損について、北海道と滝川市が謝罪した
また、学校や教育委員会が、友音さんが遺した遺書7通の内容を把握したあとも「いじめを受けていたという事実は把握できていない」などと記者会見で報告したこと。
第一次報告書では、松木さんの家庭は「地域との交流が極端に少ない家庭」、友音さんは「人の物をだまって見たりして、きらわれていた」などと報告したこと。
これらの報告、発表は友音さんや家族の「尊厳を毀損する内容」だとして、和解条項には北海道、滝川市が松木さんらに謝罪することが盛り込まれた。
和解内容全文
平成20年(ワ)第3814号 損害賠償請求事件
第1 和解の前提となる当裁判所の判断
1 いじめ防止義務違反に基づく損害請求に対する当裁判所の判断
(1)当裁判所が証拠によって認定した事実は次のとおりである。(1)当裁判所が証拠によって認定した事実は次のとおりである。
松木友音(平成5年4月24日生まれ。以下「友音」という。)は、小学3年生のころから同級生に避けられるようになり、小学5年生のときには同級生から「すごい気持ち悪い」などと言われた。
平成17年4月、友音は、6年生に進級したところ、同年7月に行われた席替えの際、多数の同級生から「(友音の隣になった)男子児童がかわいそうだ」と言われたり、同級生の男子から「うざい」と言われたりしことから、同月6日、担当教諭にその旨を訴えた。7月14日、修学旅行(8月31日、9月1日実施)の自主研修の班分けがなされたところ、担当教諭が自分たちで班分けを行うよう伝えたことから、友音は女子児童がいない班(男子児童ばかりの班)に入ることになった。なお、友音以外の班で女子児童が一人だけの班はなかった。
7月20日、友音は、担当教諭に対し、同級生の女子児童3人に避けられている旨を伝えた。その後、担当教諭は仲裁に入ったが、友音と前記女子児童3名との関係が修復されることはなかった。
8月18日、修学旅行の部屋割りが行われたところ、担当教諭が自分たちで部屋割りを行うよう伝えたことから、友音だけは部屋が決まらなかった。その後、担当教諭も交じって数回にわたって話し合いが行われた結果、友音は前記女子児童3名がいる部屋に入ることになったが、その女子児童3名のうち2名は、担当教諭に対し、「どうでもいい」、「(友音と)一緒になっても、しゃべらなくてもいいの」などと言っていた。
8月31日の修学旅行の際、友音は、宿泊先のホテルで、教諭の部屋を訪ねてきて、「みんな窓に張り付いて外の景色が見えないので見せて」と言った。しかし、外は真っ暗で何も見えない状態であった。また、友音は「部屋の鍵がない」と言って、自由時間に一人でエレベーターを使って上に行ったり下に行ったりを繰り返していた。
修学旅行後の初登校日である9月5日、友音あ、前記女子児童3名のうちの1名に対して自殺を予告する手紙を私、9月7日、授業中にカッターの刃を出し入れして手首に当てていた。
9月8日は台風のため臨時休校になったところ、9月9日早朝、友音は6年生の教室で、教卓の上に7通の手紙(遺書)を残し、自殺を図った。そして、翌年の平成18年1月6日、死亡した。
(2)(1)の事実に弁論の全趣旨を総合すれば、友音は小学3年のころから長期にわたって同級生に仲間はずれにされており、修学旅行の前からその仲間はすれはさらに顕著なものになったが、担当教諭らは友音が同級生に仲間はずれにされていると認識していなかったと認められる。しかし(1)の事実に弁論の全趣旨を総合すれば、担当教諭らが友音を注意深く観察し、互いに情報を共有していれば、担当教諭らは友音が同級生にいじめられていたことを認識することができたというべきであるから、この点に過失があったというべきである。
そして、仮に担当教諭らがそのことを認識していたら、場合によっては友音が自殺することも十分予見することができたというべきであり、さらに、担当教諭らがそのような事態を予見した上で、友音の訴えにより注意深く耳を傾けたり、同級生に対して適切な指導をしたり、あるいは原告や友音の叔父に対してそのような事態になっていることを連絡したりしていれば、今回のような事態にはならなかった可能性が十分にあると認められる。
よって、被告らは、友音の自殺によって生じた損害を賠償する責任を負わなければならない。
2 調査報告義務違反に基づく損害賠償請求に対する当裁判所の判断
関係各証拠によれば、友音が残した7通の手紙(遺書)のうち、「学校のみんなへ」という手紙(遺書)と「6年生のみんなへ」という手紙(遺書)は、その内容を読めば、友音が同級生にいじめられていたことを苦に自殺を図ったことを容易に理解することができるものであったと認められる。そして、関係各証拠によれば、友音が通っていた小学校の校長及び滝川市教育委員会の教育長らは友音が自殺を図った後、比較的早い時期に前期2通の手紙(遺書)の内容を把握したと認められる。
しかし、関係各証拠によれば、校長らは、前記2通の手紙(遺書)の内容を把握した後も、「(遺書の)内容については、遊んでもらった友人に対する好き嫌いなどの悩み、一緒に遊んでくれてありがとうといった内容でありますが、仲間外れにされている思いがあったのかもしれません。」、「多くの聞き取りの結果、特定の児童が標的になってまわりから肉体的・精神的な攻撃を受けたという報告は聞いておりません。」、「学校として、教職員への聞きとりや、児童からの話等をもとに現在のところ直接的に事故に結びつく原因があたと判断できる情報は得られていません。」、「暴力的・精神的ないじめを受けていたという事実は把握できてない。(遺書には)友人関係について好き嫌いを表現したものであり、事故に結びつく事実を把握できていない。」などと、遺書の内容を把握していた事実と異なる報告をしたと認められる。
また、関係各証拠によれば、滝川市教育委員会の教育長らは、遺書が新聞意掲載された日の翌日である平成18年10月2日、記者会見において、「自殺の原因はまだ特定できていない。現時点ではまだいじめの事実をきちんと把握できていない」旨の説明をしたが。その後全国から批判や抗議が相次いだことから、10月5日の記者会見において、「自殺の原因はいじめにあった。」とそれまでの説明を一転させたことが認められる。
そして、関係各証拠によれば、原告及び友音の大叔父は、前記認定の校長や教育長らの報告及び説明により、さらなる精神的苦痛を受けたことが認められる。
本件において原告の慰謝料を算定する際には、このような事情も考慮すべきである。
第 2 和解条項
当事者双方は、前記第1の和解の前提となる当裁判所の判断を受けて、次のとおり和解する。
1、被告らは原告に対し、連帯して、本和解金として2500万円の支払い義務があることを認め、これを支払う。
2、被告滝川市は原告に対し、本件発生後に、学校及び滝川市教育委員会が原告を含む友音の遺族(以下「原告ら」という。)に対する適切な対応を怠ったこと、手紙(遺書)の存在を踏まえた早期の調査を怠ったこと、平成17年9月20日付けの市教委の事故報告書(第1次)において、事実ではないことを書き、友音及び原告らの尊厳を毀損する内容を記載したこと、及び、友音の自殺の原因がいじめにあったにもかかわらず、平成18年10月2日にいじめは認められないとする記者会見を行ったことについて謝罪する。
3、被告北海道は原告に対し、市教委に対する適切な指導・助言を行わなかったために、名誉を毀損するような記載のある調査報告書作成と言う事態を生じさせたこと、入手していた手紙(遺書)の写しが所在不明になったことにより、原告らの心を傷つけたことについて謝罪する。
4、被告北海道は、本件を教訓として今後、同種の事件について北海道内の市町村教育委員会に対し、次のとおり指導する。
「真相究明のために、必要に応じて、第三者ぶよる調査等を行い、また、被害者及びその親族の意見を聴く機会を設けること」
5、被告滝川市は、今後、本件と同種の事件について、真相究明のために、必要に応じて、第三者による調査等を行い、また、被害者及び、その家族の意見を聴く機会を設ける。
6、被告北海道は、本件と同種の事件の再発防止のため、本件和解調書の写しを北海道内の市町村教育委員会に送付し、同教育委員会に対し、本件和解の内容を教職員に周知徹底するよう指導する。
7、被告滝川市は、本件和解の骨子を広報たきかわに掲載する
8,原告はその余の請求をいずれも放棄する。
9,原告と被告らは、原告と被告らとの間には、本件に関し、本和解条項に定めるもののほかに何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
10 訴訟費用は各自の負担とする。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。